■01/絶対忠誠!■
うっかり見惚れるくらい、ルルーシュのそれは赤くて。
紡がれる言葉すら、色めいて聞こえる始末。
「ねえルルーシュ」
それに、食べたらとろけるほどに美味しいと、僕はすでに知っている。
「キスしても良い?」
ひたと見詰めるのは、危なげに弧を描く唇。
ルルーシュはトントンと開いたままの数学のノートを指で叩き。
全問正解しろ。そしたら褒美にくれてやる。
そんな妖艶に微笑まれたら、逆らうなんて出来る訳ないじゃないか。
■02/しっぽは口ほどに■
スザクが望むなら、いくらでも奪っても構わない。
けれどそれでは少々アンフェアだ。
「制限時間は二十分で、この問題まで。俺が欲しいなら、やってみせろ」
ピンと空気が張り詰めて、言葉もなくスザクは問題に取り掛かる。
身が切れるほどの集中に、胸がひどく満たされた。
欲しいのは、おまえごと。
甘い囁きなど望みはしないから。
そうやって、ただ俺だけに尻尾を振っていれば良いんだ。
おまえは、可愛い可愛い俺の忠犬なのだから。
■03/「待て」ができない■
僕の刻む筆跡を、ルルーシュのアメジストが追いかけているのを感じる。
見事なポーカーフェイスで、表情一つ動かさず、僕の指先を静かに眺めていた。
最後の問題を終えるその刹那、ルルーシュの睫が微かに震えた。
解答に間違いのないことを知るのは、僕にはそれだけで十分。
ルルーシュが採点用のペンのキャップを外す前にその腕を掴み取り、顔を寄せる。
「ご褒美、頂戴ね」
突然のことに目を見開くルルーシュの唇に僕は噛みつくようなキスをする。
ボールペンが落ちた音だけが、いやに耳に鮮明だった。
■04/躾不足です■
下唇をきつく咬まれ、強くそれを吸われた。
深く穿つように唇を強引に重ねられ、にわかに拒もうとすれば、熱い舌をねじ込
まれこれ以上ないほど蹂躙される。
食まれ、撫でられ、激しく絡められた舌は感覚が遠く、
わずかな痛みに舌先が痺れた。
唾液はスザクに吸われ、すべて嚥下される音に酔わされる。
とうに上がった息すら奪われ苦くて首を振れば、上顎と歯列を丁寧に舐められ、
鼻から抜けるような声が漏れるが、
それはスザクを余計に興奮させる以外に役にたちはしない。
目眩に霞む思考で、こんな駄犬は初めから鎖で繋いでおくべきだったと、
「ん…ッ!んぅ…」
俺は激しい後悔に苛まれた。
■05/愛しくってしょうがない■
満足するまでルルーシュを貪った。
嫌々をするように振られた顔を無理矢理押さえつけて、溢れそうなお互いの唾液
を飲ませるように流し込んだ。
苦しげに歪んだ瞳に浮かんだ涙を舐めて拭って、ようやく解放してあげる。
顔を薔薇色にしたままのルルーシュの荒い呼吸が収まった頃。
「ごちそうさま」
と、そう言えば、半ば酩酊して潤む眦をきつく吊り上げた。
言ったらきっと怒られるけど、ちょっと泣きそうになりながら僕を睨む顔が、
すっごく可愛いと思う。
可愛い。愛しい。抱きしめたい。
「大好きだよ、ルルーシュっ」
だからもう一回キスしても良い?と確信を持ちつつ訊いてみた。
ルルーシュをそっぽを向いて、小さく呟く。
このバカ犬…。
小さな了承の合図に、今度は啄むような、優しい優しいキスをした。
- fin -
2008/6/13