君に、


 

■愛してる■


「あれ、兄さんもうこちらに来てしまったの?」
「そうかい?俺は遅いくらいだと思ったんだけどな」
「もしかして、僕が寂しくなるから、早く来てくれた?」
「ああ、そうだよ」
「あはは、やっぱり、兄さんは嘘つきだね」
「嘘じゃないさ。嘘をつくのは、もうやめたんだ」
「ふうん、そっか」
「ありがとう、おまえのくれた刹那は、多分とても幸せな時間だった」
「本当?だったら、僕はすごく嬉しい」
「言っただろう、嘘は言わないよ」
「うん。信じる」
「じゃあ、ついでにこれも信じてもらおうかな」
「なあに?」
「愛してるよ、ロロ」
「ありがとう。でも、僕はそんなこと、とーっくに知っていたんだよ!」
「…そうか。そうだよな、おまえは俺の弟なんだものな」



















■愛していました■


「まったく。嫌ぁね、反抗期なんて!」
「子供はそういうものです」
「…可愛くない。全然可愛くないわ!私の知っているルルーシュは、もっと可愛かったのよ。ああもう、つまらない」
「そんなに過去の思い出が好きなら、いっそC.C.のように引き篭もったらどうですか」
「あら、馬鹿な子ねぇ。それでも子が可愛いのが親心ってもんじゃない」
「そうですか」
「あーあ、本当に残念!」
「はいはい。可愛くなくてすみませんね」
「こぉんなに、捻くれてかつ綺麗に育つ過程を見れなかったなんて。もったいないことしたわ」
「…そうですか。あと、言いたい事ならなら俺も八年分あるんですが?」
「あら、受けてたつわよ」
「愛していましたよ、母さん」
「ええ、愛しているわ。この馬鹿息子」



















■本当は、ずっと■


「ああ、会えて良かったよルルーシュ!」
「俺なんかに会いに来てくれたんですか?」
「当然だろう?私はお兄ちゃんだからね!最後に会った君は震えていたから、ずっとずっと心配だったんだ」
「…相変わらず、変な人だ」
「君も相変わらず意地っ張りだなあ」
「そんなことありません」
「…頑張ったね、ルルーシュ。もう休んでも良いんだよ」
「俺は、」
「さあ、そのお喋りな口を閉じたまえ。君には休息が必要だ!」
「…そうですね、少し、疲れました」
「ゆっくり眠りなさい。誰も咎めはしないよ」
「では、子守唄を歌ってください」
「おや、君にしては珍しいお願いだね?」
「兄さんが言ったんですよ『歌でも歌うか?』と」
「ああそうだったねぇ、すっかり忘れていたよ」
「…本当はずっと、あなたの歌が聴きたかったんです」
「それはそれは、光栄の至り。では、とびきり優しい歌を君に捧げよう」



















■どうか笑って■


「ばか!ばかばかばかばか、ルルの馬鹿!!」
「はは、酷いなシャーリー」
「あ、謝ったって許さないんだからね!わ、私は…っ」
「ああ、泣かないでくれ。…シャーリーだけは、泣かせたくないんだ」
「私は、ルルに幸せになって欲しかったの」
「俺は、これで満足なんだ」
「それだけじゃ嫌なの。世界があなたを許さなくても、それでもルルに幸せをあげたかったのよ。
溢れるような笑い声とか、泣きたいくらいの幸せとか、誰かの隣の安らぎとか、優しい春の風もきらきらの夏の花火も、全部全部ルルにあげたかったの」
「…我侭だな、シャーリーは」
「違うよ。これは我侭なんかじゃないもの」
「どうして?」
「だって、私はルルが大好きだから。我侭じゃ、ないんだよ」
「…じゃあ、俺のお願いを、ひとつだけ聞いてくれるか?」
「うん。いいよ」
「どうか笑っていてくれ。俺は、シャーリーの笑顔が好きなんだ」
「…ばか。ルルは本当にズルいんだから」



















■ごめんね、ありがとう■


「ルルーシュ、ありがとうございます」
「…ユフィ、俺は、」
「優しい世界を、ルルーシュが創ってくれました。わたくしはそれが、とてもとても嬉しいんです」
「だけど、君はそこにいない」
「良いんです。だってそれはルルーシュも同じでしょう?」
「同じじゃない。俺は踏みにじった。君は、あそこにいるべきだったんだ…」
「まあ、そんな顔しないでルルーシュ」
「…すまなかった。俺は君を」
「謝らなくていいんです。だけど祈りましょう。愛しいナナリーのために、大切なスザクのために、大好きな友人のために」
「…俺にそんな資格はあるのだろうか」
「もちろんです。みんな、まだ泣いています。ルルーシュを想って。だから、あなたは笑っていて下さい。私も、ルルーシュの笑顔が見たいの」
「…ありがとう、ユフィ」
「さあ、一緒に見守りましょう。あなたの創造した、この優しい世界を」





























言いたかったこと。

言えなかったこと。

今ならきっと、言えるから。

これからずっと、愛を紡ぐから。





ごめんね。

ありがとう。

大好き。

愛してる。

- fin -

2008/9/28

拍手その5。
最終話後。