「なんて顔、してるんだよ」
ばかだな、とそう言って笑う顔が、凜とした瞳に似つかわしくないくらい、優し
くて。
「ほら」
鼻腔の奥がずくりと痛むのを歯を食いしばって堪えてみたけれど。
「ここは、君にあげるから」
視線で促されたのはルルーシュの細い肩。
その腕も足も微笑みも、心ですら、彼のすべてはナナリーのためにあると、彼自
身が、言ったはず。
それを、たった一点でも自分に与えると言うのか。
ひたすら噛みしめていた力をゆるめると、両頬が濡れるのを感じたけど構わなか
った。
あの、薄い肩が自分のものだと思うと、奇妙に胸が軋む。
俺のものだ。
そう思っただけで、堰はぷつりと呆気なく切れた。
短い距離を限りなくゼロにするため、駈けよってなにかを請うように膝をつき、
きつくきつくしがみつく。
力を抜くこともできないまま震える指もごまかせず、我にかえってみたら細く尖
ったルルーシュの肩にこすりつけるように額をつよく押しつけていた。
泣き虫。
と、静かな呟きが聞こえたが、歓喜にうち震えながら苦しくて仕方ない俺
にはただ甘くて。
ぼろぼろこぼれる雫を止めるすべも、食いしばった歯の間からどうしようもなく
漏れる嗚咽を殺すすべも持たないまま、俺は与えられた肩で泣いた。
- fin -
2007/10/9
原点回帰。
ギアスで1番始めに書いた小話。