だって期待しちゃうよ


先生と僕4

ただいま一途に迷走中!
恋は急に止まれませんので、どうぞご注意ください。

















































好きな人に良く思われたい、というのは人間の心理で真理だ。
勿論例に漏れることなく、ルルーシュだって、そうだ。
ありのままの自分が愛されるのならそれが理想だとして、世の中そんなに甘くない。

可愛いって思われたい。
大人だって認めてほしい。
好きだって言ってほしい。
少しでも自分を気に掛けてほしい。

「我儘、なのかなー…」

「ん?どうかしたの、ルルーシュ」

「いいえ。ただ今度のテストで、国語も数学も社会も理科も満点が取りたいなって話しです」

「あはは!それは確かに欲張りだねー」

「はい。欲張りです」

「でもさ、」

きらきらと、スザクは翡翠色の瞳を細めた。
ああ、嫌な予感がする。
教科書の影にそっと顔を隠して、情けない表情を伏せた。
大人の正論なんて大嫌いだ。

「それはルルーシュが一生懸命頑張れば、きっと叶うと思うよ!」

ルルーシュは予想通りの朗らかなスザクの言葉に、こっそり溜息をつく。
努力して叶うなら、何だってやる。
本当に、何だって。
だけど、スザクは自分の願い事に満点をつけてくれたことなんてない。
自分ですら、正解も不正確も何かわからないままなのだ。

「…うん、そうですよね。やっぱり勉強しないとダメです、ね」

「そうだよ!」

「………そうですね」

「うん。ルルーシュはもともと賢いし、僕は決して無理だとは思わないよ」

「……………頑張ります」

「頑張ってねっ!」

何故だろうか。
好きな人といるのに徒労感しか募らない。
とりあえず気を取り直して勉強に戻る。
自分をより聡明に、より大人に見せるには、それ相応の努力だって必要なのだから。
試験だって、スザクがそう言うのなら満点を取ることだってやぶさかではない。
そしてスザクに褒めてもらいたいという、願望に反して子供っぽい下心も、あえて否定はしないが。

それに、あと三十分もすればルルーシュの自由時間だ。
それまでは、彼との契約通り勉強に集中しよう。
スザクは今ルルーシュが貸した小説を楽しそうに読んでいて、残りのページはほんのわずかのようだった。
今日は、この本についての感想を言い合おう。
彼の感想は奔放で、自由で、ミステリーの定説も軽く無視するけど、何故か彼なりに筋は通っている。
そういう相手とのミステリー談議はとても楽しくて、毎回胸が躍った。

「あ、そうだ」

突然、何かを思いついたように、スザクが本から顔を上げた。
にんまりと、まるで悪戯を考えた子供みたいに。

「次の試験で成績が落ちたら、お仕置きっていうのはどう?」

「………え?」

「はは、なんてね!ルルーシュが簡単に成績落とすわけないか」

マリアンヌさんとの約束もあるしね、とスザクはひとしきり笑うと、そのまま何事もなかったように読書に戻った。
ほんの思いつきなのは明白だったけれど、ルルーシュはそれどころではない。

(お仕置き?スザク先生が、僕にお仕置き…?)

スザクはいつもベビーフェイスに笑顔を絶やさず、砂糖菓子のように甘く優しくて、誰よりも正義感が強い。
そんな彼がサディスティックに誰かをいたぶるなんて、考えたこともなかった。
不意にぞくぞくと華奢な背が震え、アメジストの瞳が恍惚ととろけた。
気紛れからこぼれ落ちた、たった一つの単語がルルーシュの頭を離れない。
付随する危うい妄想が、さらにそれを助長する。

(お仕置き。お仕置き。お仕置き…っ!!!!!)

相手に自分を知ってもらいたいと思う。
「良い子だな」って思われたい。
同時に、相手の知らない面を知りたいというのも、やっぱり人間の性なのだろう。
それからの三十分間は、言うまでもなくルルーシュは集中することが出来なかった。





























*





























試験当日。
ルルーシュが問題用紙を前に真剣に頭を悩ませたのはその解答ではなく、成績が下がっても母に叱られない最良 の点数と、それからスザクに対する何十通りもの言い訳だった。

- fin -

2009/9/16

タイトル/酸性キャンディー 『年の差なんて10題』