偽りブラック


COLORS

涙が、出てしまいそうだった。
願って願って、ようやく叶った彼との邂逅。

















































相変わらず凛々しいアメジストの瞳は美しくて、何より眩しい。
けれど以前より少し痩せただろうか。
もともと食は細かったけど、ごはんはちゃんと食べているかしら?
お得意の夜更かしをして、寝不足はしていない?
最愛のナナリーと離れて悲しみにその瞳を曇らせたりは?

次々に浮かぶ質問も、涙でつまった。
だけどぐっと堪えて、いつもの彼の記憶にあるだろう微笑みを浮かべて礼をとる。
だって、あなたの中の私は、いつだって笑顔でいたいから。





























「久しぶりだな、ミレイ。…その髪は、どうした?」

「ご無沙汰しておりました、ルルーシュ殿下。
このようなお見苦しい姿、心からお詫び申し上げます。殿下はお変わりございませんでしょうか?」

「せっかく会えたんだ。…普通にしてくれ」

拗ねたように尖らされた唇に、私はこれで社交辞令も終わり、と瞬きひとつ。
にっこりと唇の両端を弓のようにつりあげた。

「うふん!ひっさしぶりー!元気してた?でもコレ、結構似合うと思わない?」

ねえルルちゃーん?がらりと打って変わって砕けた口調になって髪を一束つまみ 首を傾げると、思わずといった様子で憮然としていたルルーシュが噴き出す。
けれどすぐに眉根を絞って私の髪へと、細い指を伸ばした。

「ルルちゃん。アッシュフォードはね…ううん。私は、何処にいようとあなたを 守るわ。だからそんな顔しないでよぅ!」

「でも…、綺麗なブロンドだったのに…」

憂いの紫が見つめる先は、黒く染め上げた私の髪の先。
ブリタニアがなんの支配権も持たないこの地では、淡い金髪など異質でしかないから。
私が目立っては本末転倒もいいところ。
彼の立場を危うくするものなんて、不必要でしかない。

「いいのよ。私がしたくてしたんだもの」

「ミレイ…」

だから、ああ、お願い。
そんな顔しないで。
あなたが受けてきた痛みや屈辱に比べて、なんて安い代償でしょう。

「そ・れ・にっ!」

あなたの側にいることが許されるなら、こんなのなんてことないのよ。

「ルルちゃんとお揃いって、なんか良くないかしら!」

鏡に写る黒髪を見るたび、あなたを思い出せる。
そして『綺麗』だと褒めてくれたルルーシュの言葉は、どんなに色が変わろうと私にとってなによりの宝物。
それに対しての不平は、例えルルーシュであろうと許さないわ。

「ね?」

と強引に最後の一押しをすれば、しかたのない人ですね、と呆れたよう に、困ったようにルルーシュは笑うから。
つられて私まで嬉しくなってしまう。

少しだけ冷たくなった風に揺れる二つの黒髪は、たくさんの嘘を隠して、宙を舞 った。

- fin -

2008/8/2