指切りスカーレット


COLORS

それは、まるでなにか大事な決意のようで。
気高い瞳に繋いだ指先が震えた。

















































枢木神社の長い長い石段。
その中腹にどかりと座って、俺は橙と薄紫に染まっていく雲をじっと睨んでいた。
用事があるから、と言って出掛けたきりの、ルルーシュがまだ戻らない。
イライラと爪を噛んで、夕方までには帰ってくると言った横顔を思い出す。

(…遅い!!暗くなったらあいつこの階段こけそうだし…。 ああもう、早く帰ってこいよっ!)

もうほとんど陽が傾きかけているその時、濃い影を落とす階段下に、細長い人影 を見つけた。

「ルルーシュ!」

大声で叫んだ俺にルルーシュが気付いて上を見るより早く、俺は立ち上がってそ のまま数段飛ばしで階段を駆け降りる。

「ただいまスザク。そんなに慌てると転ぶぞ?」

「俺はおまえと違ってそんな鈍くさくない!」

「悪かったな。…さあ帰ろうか」

思わず綻びそうな口元が悔しくて、必死に力を込めて堪えた。
自然に差し出された手を強く握り返して、二人で階段に足をかける。
薄い紗のようにかかっていたオレンジ色が、段々と深い朱へと変化する夕焼けを 背にして、長い石段を黙々とあがっていく。

いつもなら何かしら話をするけど、今日はルルーシュが考え事でもあるのか、 ずっと眉間に皺を寄せたまま難しい顔をしていた。
俺は指先にルルーシュを感じられることを噛みしめるように、 ぎゅっと握りしめながら同じように黙って歩いた。

こういう時、ぼんやり考え事をしているルルーシュは、なんだかひどく遠い。
ふと、歩くペースは乱さずに、ルルーシュがぽつりと問いかけてきた。

「スザク…日本の夏には何がある?」

「夏?」

「ああ」

突然、ずいぶんおかしなことを訊くなと思ったけど、ルルーシュの目が少し張り 詰めているように見えた。
夏がどうかしたというのだろうか。

「えっと…夏祭りに花火、ホタルと蝉と向日葵と入道雲。海とプールとキャンプ に…スイカ冷やし中華かき氷流しそうめんアイスシャーベット茄子冷や麦に…」

「おいおい、後半、食べ物ばかりじゃないか?」

「べ、別にいいだろ!?」

くすくすと呆れたように笑うルルーシュに、何故だかひどく安堵する。

「…夏祭り、行ってみたいな」

     おまえと。
どうして、その綺麗な微笑に不安を覚えるのか、自分ではわからなかったけれど。
ルルーシュが自分から何かを"したい"と言うのは初めてで。

「だったら、連れてってやるよ!」

力強く請け合った。
季節をほぼ一周する頃、絶対に二人で行こうと。

その言葉に振り返って笑うルルーシュその瞳に、心ごと奪われる。
怖いほど美しいそれは、紅い夕日を受けて、





























「ああ、約束だ」





























燃えるように光った。

- fin -

2008/8/2

(あと一年、俺が戦争なんてさせやしない)