FLOWERS
ルルーシュに与えられた猶予は一週間。
それ以降、ルルーシュは『宝探し』をしないと、後見人であるコーネリアに誓っていた。
もともと、育ての親同然の義姉の反対を押し切ってここまで来たのだ。
ルルーシュは皇女とはいえすでに皇位継承権を失効している身だ。
厳しい目をする義姉が、けれど誰より己の身を案じてくれていることをルルーシ
ュは知っている。
コーネリアがいなければ、この歳まで皇族としての誇りを持ったまま生きてはこ
られなかった。
感謝してもしきれないからこそ、今回の身勝手は心から済まなく思う。
だからさすがにこれ以上の我儘は許されなかった。
「初めは、やはりあそこか」
コーネリアに提示された『宝探し』の条件は、就任式までのタイムリミットと、
このエリア11の軍または政治的な任務を担っている者の手を借りないことの二
つのみ。
監視者を付けないあたり、コーネリアの身内への甘さを感じるが、毛頭この条件
に背くつもりはない。
ルルーシュは豪奢なドレスを脱ぎ捨てて、簡素な薄紫のワンピースに黒いカーデ
ィガンだけを羽織り、姿見でおかしなところがないかチェックして、ルルーシュはそのまま政庁を出た。
約束通り、護衛はつけない。
望むものがあるなら、その身一つで手に入れてみせろ、と義姉は言ったのだ。
自身で戦場を駆る、勇ましいコーネリアらしい条件だと思った。
心配そうに見送りにまで来たクロヴィスを振り切り、ルルーシュは本当の意味で
、敗戦国日本の土を踏みしめた。
行き先は、海を超える前から決めていた。
*
ブリタニアと日本の間に戦争が起こった時分、ルルーシュは妹と共にこの日本に
いた。
母も後ろ盾も失った姉妹は、体の良い人質としてしか存在意義を認められなかっ
たのだ。
あの時、義姉のコーネリアが姉妹を助け出してくれることがなければ、ルルーシ
ュ達は今のように暮らすことは出来なかっただろう。
けれど、ルルーシュはブリタニアへ帰ることによって、大切な『宝物』を手放し
てしまった。
幾夜泣いても足りぬほど、ルルーシュは悔いた。
無理を押し通してまでこの地を踏んだのは、つまり『宝物』を取り戻しに来たの
だ。
ルルーシュ、僕、もっと強くなるよ。強くなって、僕がルルのこと守るから。
幼く、甘いだけの約束。
あの時の約束を彼女が覚えているなど、ましてやそれを履行して欲しいなどと
は、ルルーシュは望んでいない。
だがルルーシュも約束を交わしたのだ。
ずっと傍にいると。
敗戦国にひとり置き去りにした自分を、泣き虫だった少女は恨んでいるかもしれない。
傲慢だと、後ろ指を指されても良いと思った。
例え、捨てられていたのが自分だったとしても、もう一度触れることが叶えば、ルルーシュそれで構わなかった。
「………スザク」
欲するその名を胸に押し当てる。
今でも何より大切に思う、宝の名を。
- fin -
2008/9/16