ワールドエンド


PHOTO CLUB

世界の始まりは、君だった。

















































部活の定休日の木曜日。
僕は夏休みが明けてすぐに新調した二人掛けのソファに凭れながら、 至極楽しげに写真を焼くルルーシュを眺めていた。
つい頬が緩むのは、きっとしかたがない。
だって、明日はとてもとても大切な日だから。

パッと、引き伸ばし機に明かりが灯った。
数秒でまた元通り暗闇になった時、僕は、ねえ、と作業中の彼の背中に声を掛けた。

「ルルーシュ、明日の夜ってあいてる?」

「悪いが予定がある」

「嘘っ!?」

僕は悲鳴をあげた。
明日はルルーシュの誕生日だ。
僕は放課後部活があるけど、夜なら絶対に会えると思っていた。
思いきりお祝いしてあげようと、ずっと楽しみにしていたのに。
夜は例年通り、ナナリーと二人きりで過ごすと言いだしたのだ。

せめて、(自分の誕生日なのに)彼が作る豪華なディナーのご相伴にあずかりたかったと僕は涙を飲む。
きっとプリプリの海老がたくさん入ったグラタンに、デザートは手作りのとろけるような 苺のムースだったんだ、ああもしかしたら得意な自家製のプリンかもしれない!
勝手にメニューまでリアルに想像して、余計悲しくなった。

(ううう、愛されてる自信が家出しそう…)

ルルーシュには、誕生日くらい恋人のためにあけておく時間はないのだろうか。
黙々と現像作業をしている彼の後ろ姿を、切なく眺めた。

「じゃ、じゃあ欲しいものは?…えっと、ごめんね、結局悩んじゃって、まだ買えてないんだけど…」

「…そうか。だったら」

一縷の望みに縋り、申し訳なさから次第に尻すぼみになる言葉に、ルルーシュがくるりと振り向いた。
最後の印画紙を定着液に浸し終わったらしく、 セーフティライトしか灯していなかった暗室の蛍光灯が点けられる。
眩しさに目を細めると、紅い唇が甘く誘いの文句を紡いだ。

「おまえの明日が欲しい」

唐突に明るくなった部屋よりも、「明日、授業サボってデートしないか?」と。
そう言って、少しだけ照れたように微笑んだルルーシュに、僕は蛍光灯の明かりよりも強く目が眩んだ。

(        ああ、だけど)



















懺悔します。
神様ごめんなさい。
僕はこんなに可愛い恋人に、嘘をつきました。

- fin -

2008/12/3