PHOTO CLUB
僕は世界で二番目に幸せになりたい。
そして世界一の幸いを、君に。
「おはようルルーシュ。それから、ハッピーバースデー!」
「ありがとう」
五日の早朝、僕たちはルルーシュの家の前で待ち合わせた。
十二月の夜明けは遅くて、まだ夜みたいな暗さだった。
僕は小声で、だけど精一杯のお祝いを、白く曇る息と一緒に伝えた。
「…なんか、ルルーシュ可愛い」
薄暗い朝靄の中、ルルーシュは真っ白なコートを羽織っていた。
マフラーも手袋も揃えたような白で、見慣れたルルーシュの私服とは少し違う気がする。
「マフラーと手袋はナナリー、コートは親戚の愚兄達から。
ついでに中に着てるセーターも白で、これは親戚の姉と妹からのプレゼントだ。しかも、色は示し合わせたわけではないんだそうだ」
「すっごく似合うよ。天使みたい」
思ったままを口にすれば、寒さのせいじゃなく耳を赤くしたルルーシュにぽすんと殴られたけど、
痛くはなかった。
親戚の話は始めて聞くけど、とても仲が良いそうだ。
従姉妹の妹さんは歳も近いので、今度はナナリーも連れてみんなで出掛けようと約束をした。
カメラは普段通り、誇らしげにルルーシュの肩に下がっている。
そういえば、とルルーシュの家の窓に目がいった。
「ねえ、ナナリーを置いてきて、本当に良いのかい?」
「ああ、今日は大丈夫だ。それに、」
「ん?」
「これもナナリーからのプレゼントだ。
…い、言っとくが、昼間デートしてこいって言いだしたのも、全部ナナリーだからな!」
「あはは、うん、ナナリーには感謝しなきゃね」
聡明な少女に心の中でお礼を言って、僕は笑った。
それから素直じゃないところも可愛いから、ルルーシュは困る。
「それじゃ、行こう、ルルーシュ。今日は何処にでも付き合うよ」
「ふん、当然だ」
誕生日だからな、とルルーシュは偉そうに言い切る。
ナナリーの前では絶対に言わないだろう子供っぽい言い方に噴き出しながら、
その柔らかい手袋ごとルルーシュの手をとった。
こんな早い時間なら、咎めるものなんて何ひとつない。
手袋は暖かかったけど、指を絡められないのが少し残念だなと思っていたら、
ルルーシュはそっぽを向いて「ナナリーから貰ったものは汚せない」と言って手袋を外し、
普段よりあたたかい指で僕のかじかんだ指に触れてきた。
幸せで息が詰まって、指も顔も熱くなる。
(ああ、ルルーシュはズルイ!)
ルルーシュの誕生日、なのに。
(僕ばっかり嬉しいなんて、ほんとに、)
嬉しくて幸せで、でもやっぱり悔しいから、ぎゅっと痛いくらいに、指を絡めてその手を握りかえした。
- fin -
2008/12/4