ワールドエンド


PHOTO CLUB

Let's be for a long time together.
Until the day when the world ends!

















































ルルーシュに連れて来られたのは、郊外の海岸だった。
灰色の砂浜を、彼に促されるまま二人で歩く。

「さすがに寒いね。ルルーシュ、海に来たかったの?」

「別に」

「え?じゃあなんで?」

潮風が冷たいのか、だって、と言ったきり、ルルーシュはマフラーに深く顔を埋 める。
その小悪魔みたいに確信に満ちた顔を、僕は見逃さなかった。

「ここなら、世界に二人きりみたいじゃないか」

白いマフラーが視界を横切る。
確かに、冬の平日の海には誰一人いなかった。

(ああ、適わないなぁ…)

こうして僕は、一秒ごとに彼に魅了されるのだ。
ルルーシュは僕の手を離すと、楽しそうに波打ち際まで進んでいく。
僕は空いた手をポケットに突っ込んだ。
指先に当たる冷たい感触に、ここまで来てどうしようかとまだ迷っている。

「スザク?」

硝子が砕けるように光が散る海を背にして、ルルーシュが振り向いた。
勇気はまだ持てなくて、僕は曖昧に苦笑した。

「ねえルルーシュ、プレゼント、こんなので良かったの?」

実際、疑問に思っていたことを告げる。
自分の誕生日には散々我儘を言っただけあって、 ルルーシュの欲しいものや、したいことがあるなら、できる限り尽くしてあげたかった。
想いを伝えるには、まだまだ全然足りない気がしてしまう。
ルルーシュはきょとんと目を丸くすると、ふっと吐息をもらす。

「そんなことはないさ。俺は大層なものを貰ったじゃないか」

「え?」

ルルーシュが強請ったのは、今日授業をサボってデートをすることだけだ。
僕がしてあげられたことなんて、何もなかったはずだ。
けれど、おまえは勘違いしてる、とルルーシュは声高らかに言う。

「馬鹿だな、聞いてなかったのか?…俺は、おまえの“明日”が欲しいと言ったんだ」

波音に掻き消されそうな空気を裂いて、ルルーシュは声を張る。
彼の言葉に触れた耳から、痛いほどの痺れが走った。

「今日の明日も、明日の明日も、”明日”っていうのはずっと”明日”なんだよ、スザク」

氷が溶けるように優しく笑って、ゆっくりとルルーシュは瞬く。

「写真だけじゃ足りないんだ、おまえだけは。どれだけたくさんの写真撮っても足りなくて。 昨日じゃなく、今日でもなく、明日のスザクの、見たこともない顔が見たいんだ。 その手に触れたい。声が聴きたい。今日より幸せなスザクと、ずっと一緒にいたい。…だからっ、」

白いセーターに包まれた腕が、そっと包むように広げられる。
溢れるようなやわらかい微笑が、潮風に溶けていく。






























「俺はおまえの明日が欲しいんだ」





























確かめるように、もう一度ルルーシュは凛と言いきった。
堰を切ったように言葉を吐き出したルルーシュは顔を上げ、まっすぐ僕をみつめた。
白く凍る吐息と、僕を射る瞳が、不安げに揺れている。
僕は、ポケットに入れたままの拳をきつくきつく握った。
多分、僕は世界で一番幸せ者なんだ。
それなのに、僕は。

(…ごめん。僕は、君に嘘をついたんだ)

歯を食いしばらないと、恥ずかしさと後悔で泣いてしまいそうだ。
ポケットで指先に触れる、すっかり体温であたたまってしまったシルバーリング。

(プレゼント買ってない、なんて)

勇気がなくて言い出せなかったことに、僕は人生最大級の後悔をした。
ごめんね、ごめんなさい。
不安だったんだ。
君を疑ったんだ。
だって約束なんてしたら、手放せなくなりそうで、怖かった。

(ああ、本当にごめんね。勇気をくれるのは、いつだって君で)

シルバーリングを握り締めて、僕は白砂を蹴った。
臆病な自分を、振り切るように全力で。

「…ルルーシュっ、」



















リングを渡したら彼を抱きしめて、愛してると言おう。
そしてキスをしよう。
ずっとずっと。
世界の終わりまで、僕は君を離さない。

- fin -

2008/12/5

Dear Lelouch.

Please become happy!!!